続いてのヒーローは…
村上弘明(むらかみ・ひろあき)さんです。
この人はデビューから近年に至るまでほぼ一貫して正義のヒーローだと思います、途中紆余曲折ありつつも。
芸能界への入口は1979(昭和54)年の映画「もう頬づえはつかない」のオーディションで、一度はこのグランプリになり主役デビューも予定されていたそうですが、相手役女性が急遽変更となり、新人から桃井かおり氏になるや、相手役として年齢的に釣り合いが取れなくなり、奥田瑛二氏が抜擢される事となり、別の役で出演することとなります。ちょっとケチがついた格好でしたが、彼のデビュー作として世に知られるのはなんといっても現在も続いている「仮面ライダー」です。
ライダーの名前としては「スカイライダー」ですが、番組タイトルとしては「仮面ライダー」という初作と全く同じものでした。
当時は1975(昭和50)年限りで「仮面ライダーストロンガー」が放送終了となり、一連のシリーズが一旦完結していた中で、リバイバルブームが到来し、ウルトラマンシリーズもアニメですが「ザ・ウルトラマン」として復活したりしていましたが、仮面ライダーもその気運が高まっていて、1979年10月に約4年ぶりに復活した仮面ライダーシリーズとして、原点回帰なのか初作と同じ「仮面ライダー」の番組タイトルで1年間放送されました。
このスカイライダーの主人公に選ばれたのが村上氏であり、ライダーに変身する「筑波洋」として活躍する事となります。個人的には当時小3で、村上弘明という役者というより劇中の「筑波洋」と見ていたので、後に売れっ子になっても、このヒーローと結びつきませんでした。
仮面ライダー史上初の「空を飛ぶ仮面ライダー」として登場しましたが、その設定はあまり活かされてなかった感がありました。仮面ライダーの撮影はとにかく過酷というのが、歴代の出演俳優の証言にもあるところですが、村上氏にとってもかけがえのない原点であったといいます。人気俳優となって以降暫くは、仮面ライダーについて語られる機会がなく「黒歴史か?」と思われる節もあったようでしたが、当時の事務所意向等もあったようで、本人の意志とは無関係であり「大切な宝物」だそうです。
ちなみに仮面ライダー50年の長い歴史において、連続ドラマでのライダー主演俳優では唯一の「昭和30年代生まれ」となります。それまでの役者陣はすべて昭和20年代生まれで、殆どが「団塊の世代」で、またタックルを演じた故岡田京子氏は昭和33年生まれですが主演ではないのと、次の連ドラで主演した高杉俊介氏は昭和26年生まれ、数年後次に主演した倉田てつを氏は昭和43年生まれであり、主演者では村上氏が唯一となります。
仮面ライダーを1年間務め上げて卒業した村上氏、その後の飛躍が期待されましたが、暫くはそんなに目立った活躍は感じられず、仮面ライダー卒業翌年の1981(昭和56)年に「太陽にほえろ!」に犯人の一味役でゲスト出演も、ろくにセリフのないまま刑事とのカーチェイスであえなく事故死する役で、これは後から見たものですがライダーの直後のこの役か?と思いました。
その後は映画やドラマに細々と出ていたようですが、正直当時全然認識しておらず、1985(昭和60)年にその名を再び聞きました。
「必殺仕事人Ⅴ」の「花屋の政」でのレギュラー出演です。
といっても当時自分も中2くらいで、スカイライダーの役者さんと認識していませんでした。「聞いた事ある名前だな」と思っていたら「スカイライダーの人か」と後で気づいた感じでしたね。
必殺仕事人のシリーズは、主演の藤田まことさんを除いては初作が伊吹吾郎さん・三田村邦彦さんのコンビで人気を博し、次の「新・必殺仕事人」から三田村邦彦さん・中条きよしさんのコンビで長らく安定した人気を誇っていた、朝日放送のドル箱作品でした。
そのコンビを一新し、京本政樹さんと共に新加入したのが村上さんでした。演じた「花屋の政」は、それまでの三田村さんが演じた「秀」の後継的キャラクターで、ちょんまげもなく現代風髪型も継承し、劇中で走りまくってアクションをウリにしていた直情的なキャラクターでした。当初は花屋でしたが、レギュラー初作「必殺仕事人Ⅴ」最終回で身元がバレて敵に追い詰められ、崖から海中へ消え…最後には元気な姿を見せましたが、次の「必殺仕事人Ⅴ激闘編」以降は「鍛冶屋の政」として活躍を続ける事となりますが、この「政」役の抜擢こそが村上さんのブレイクにつながっていきます。
この時、京本さんが演じた「組紐屋の竜」と共に「竜・政」コンビで第二期の仕事人ブームを牽引するかと思いきや、翌年には京本さんが抜ける事となり、組む相手を出門英さん、三浦友和さんと変えながら、他のドラマの仕事(NHKテレビ小説「都の風」など)が入りながらも、村上さんは仕事人としてレギュラー放送終了まで出演を継続しています。
その後「必殺」は年に数回のスペシャル番組へと放送切替になる前からすっかり人気俳優としての地位を確立した感がありましたが、引き続き政として登場し、藤田まことさん主演の昭和の仕事人の中では、最後まで付き合った相棒のようでした。その後また、前任者的存在の三田村さんが仕事人に戻ってくる時に、入れ替わるようにして退場となり、映画「必殺5!黄金の血」のラストで政は、あまりにも呆気ない「殉職」を遂げて必殺での勤めを終える事となりました。当時は「まさか、政が死ぬとは…」と思っていましたが…、しかもこの時は「まげ」を結っていました。
必殺にも出ていた80年代末ごろからトレンディー俳優的な役どころ(1988年「意外とシングルガール」など)も演じ、長身に当時流行のダブルスーツの似合っていた印象がありました。また当時昼ドラマからブレイクしていた渡辺裕之さんとよく比較されたり、並び称されたりしていました。
90年代以降は時代劇の主役としての活動が多くなり「月影兵庫あばれ旅」や「腕に覚えあり」など人気作にも出演、準主演格ですが「八丁堀の七人」も長く出演していました。2004年からは2作だけでしたが「銭形平次」の主演も務めています。現代劇では2時間ドラマの刑事役で「警視庁南平班~七人の刑事~」で主演し、いずれもヒーローとしての像を確立しつつ演じている印象がありました。この人の演技は、そんな派手なものは感じないのですが、一定のヒロイズムを崩さない「安心して見ていられる」感が個人的にすごくあります。一定の品位を保っているというか。
長身に甘いマスクに、安定感のある声、本人は若い頃演技に自信がなく苦悩が多かったと聞きますが、これだけのスペックがあって主演俳優で闊歩しない方がおかしいだろう、と思うくらいでした。そうはいっても個々の悩みは人のイメージとは違うものであり、スペックだけではやはり生きていけないので、この人の年輪を重ねた演技に安心感があるのはそういう内面的な努力をされてきた賜物と思います。最近の動画を見ていても65歳にしてこの容姿やスタイルを保つのは並大抵のことではないし、東北の震災後は岩手出身という事もあり、震災関連のイベントに参加されていて、より親しみの持てるキャラも追加されていったことを感じます。
まだまだカッコよすぎる村上弘明さん、こんな60代になりたいと思わせる、そんな俳優さんの一人ですが、今後もまだまだカッコよさを世間に見せつけてほしいと思います。