俺たちのヒーロー列伝・その8 舘ひろし(1950~)
つづいてのヒーローは…
これまたまた流れどおり?!
神田正輝(かんだ・まさき)氏です。
舘ひろし氏と共に両輪となって渡哲也氏率いる石原軍団を引っ張った人物です。
それまでこのコーナーで挙げた人物は大抵「熱い闘うヒーロー」だったり「存在自体がヒーロー」だったのに対して、神田氏はそういった感じではありませんが、「太陽にほえろ!」が時代の波にのまれてピンチに陥った1980年に、すい星のごとく現れた「太陽を救った」ヒーローだと思っています。
「太陽にほえろ!」は1972(昭和47)年に石原裕次郎氏主演、萩原健一氏をメインキャラに据えてでっかく登場し、その後も松田優作氏、勝野洋氏…と数々のスターを輩出し、裏番組も向かうところ敵なしで70年代を突っ走ってきました。刑事ドラマのレジェンドともいわれる「七人の刑事」をTBSがリメイクして裏番組にぶつけてきてもビクともしなかった訳です。
しかし、79~80年にかかる頃、遂に強力な裏番組が現れました!
「3年B組金八先生」です。金曜8時だから金八なのですが、このドラマの放つ衝撃の大きさと、武田鉄矢氏演じる教師の熱さがついに「太陽ー」の牙城を切り崩し始めました。
「太陽ー」は当時、山下真司氏演じるスニーカー刑事が新人の頃で、79年7月に登場し、1年くらいは新人としての体制を続けるものと思われましたが、前倒しして80年4月に、3年前までスコッチ刑事として人気を誇って番組上転勤となっていた沖雅也氏演じるスコッチ刑事を復活させ、これは完全に打倒金八策といわれました。その沖氏の復帰も、殿下役の小野寺昭氏の殉職後といわれていたのが繰り上げで、先に沖氏が復帰して重厚な布陣を確立してから3ヶ月後の7月に殿下を殉職させました。
この「殿下の殉職」というのが、それまでこの番組では新人刑事しか死んでいなかったのが、初めて中堅以上の刑事が番組を卒業する事となり、大きな時代の転換点を迎えた訳です。そしてこの一大事に後任として登場したのが神田氏演じる「ドック刑事」です。神田氏は当時、杉良太郎氏主演「大捜査線」という刑事ドラマで杉氏の相棒ともいうべき沢木刑事を演じていましたが、本作出演が決まった為殉職の形で降板する事となりました。オンエア的には約1ヶ月の間、両方の作品を掛け持ちする格好になっていました。
それまでの「太陽にほえろ!」は、熱い男たちの刑事ドラマでハードタッチで、愛と根性で事件を解決していくドラマでした。多少の刑事たちのコミカルなやり取りはありながらも、事件が起こるとひたすらハードに展開し、気合で乗り切る感じの「硬い」ドラマでした。
しかしこの「ドック」は過程よりも結果を重視し、根性よりも効率を重視する男で、他の刑事たちが走りで追っかけるのを見て車で追っかけたり、拳銃も自分だけオートマチックを使ったり、普段はダジャレばっかり連発する「カルい」男、今でいう「チャラい」がピッタリのキャラクターでした。
世の中は80年代に入り、それまでの挫折を美とした世の中は過ぎ去り、手軽なものを求め、恵まれた世の中になっていき、そんな風に次第が変遷していく中で「太陽ー」は相変わらず固い殻を破れておらず、そんな折に登場したのがドック刑事でした。冗談ばっかり言いながら、なんだかんだで事件を解決していくその姿は「80年代型太陽にほえろ!のヒーロー」でした。時代の変化にうまく対応したキャラが受け入れられ、一躍神田氏もブレイクしていった訳です。反面、当初からのハードな番組愛好者からは邪道だの見なくなっただの言われましたが、それ以上のファンを掴んだのもまた事実かと思います。
ドック刑事は神田氏いわく「すぐに殉職するだろう」とスタッフに事ある毎に訊いても「死なない」と言われ、結局番組の方が先に死んで(終了して)しまったという事でした。そんな冗談ばっかり言ってたドックも、仲間との相次ぐ別れを経ていつのまにか先輩刑事になり、番組終了時には最古参になっていました。殉職がつきものの本作では殉職せず、本作に出演するために別番組で殉職となったのはなんとも面白いものがありました。
番組の終了は86年。彼の存在が無かったらここまで持ったかどうかで、特に竜雷太氏演じる「ゴリさん」の殉職後は常に中心刑事であり続け、ゴリさんとは違った形での新人教育係にもなっていきました。
刑事ドラマにて、オートマチック拳銃を使う事のカッコよさを伝えたのも彼の大きな功績かと思います。
彼が演じた他の役柄には、それほどのヒーロー性を感じられず、またそういう役柄はなかなかなかったと思うので、ドックの役が印象的かつ革命的ですらありました。
初期は見た目の通りマジメなキャラが多かったですね。
デビュー作は76年石原プロ初の制作「大都会・闘いの日々」で新人新聞記者・九条を演じ、ホントに新人のままという感じで、正義感の強う真正面な青臭い役柄でしたが、こんな感じの役がしばらく続きました。
つづく「大都会PARTⅡ」では刑事役として途中参加し、神(じん)総太郎刑事、特に何という印象も残さずという感じでしたが、これが終わると「青春ド真中!」で中村雅俊氏と組み高校教師役でボーヤと呼ばれる小森先生で、やはりマジメな二枚目、この次はすぐ「ゆうひが丘の総理大臣」へとスピンオフしまたも中村氏と組み、晩から風の中村氏と対照的なキャラクター多野木念(もくねん)という数学教師役でした。この木念役は、中村氏の「総理」とのコンビネーションが合ってきて、しかも女子生徒からモテモテの役柄で注目されるようになってきたのかな?(当時をリアルで知らず想像ですが)という感じでした。マジメはマジメなりにキャラを確立していった、という意味で。掛け持ちしていたと思いますが「俺たちは天使だ!」の探偵・芹沢準(JUN)でコミカルな面を見せるようになりましたが、他の役者が芸達者揃い(渡辺篤史氏・柴田恭兵氏など)で霞んでしまった感もありました。
▲ゆうひが丘の総理大臣より
そして前述「大捜査線」の沢木刑事、最初はちょっとひ弱な感もありつつ、途中から後輩刑事もできてしっかりした面も見せるようになってきた矢先に殉職「太陽にほえろ!」への移籍となります。社長であった石原裕次郎氏が彼を役者として一本立ちさせたいという思いから起用されたと聞きますが、このドラマの良い点は「作品ごとにそれぞれの刑事が主役を張れるところ」で、そこでじっくり時代にあったキャラを見せる事ができたのではないか、と思いました。
近年は役者よりも、土曜の朝の顔としてすっかり定着した感がありますが、舘氏同様石原プロを出た後の活躍を期待したいところです。


