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昭和ドラマシリーズ「江戸の激斗」

今回の昭和ドラマシリーズは「江戸の激斗」という時代劇です。

 

昭和50年代前半を中心に放送されたフジテレビの看板時代劇シリーズである「江戸」シリーズのひとつで、加山雄三氏主演「同心部屋御用帳・江戸の旋風(かぜ)」のヒットを受けてシリーズ化され、江戸の旋風以外にも「江戸の渦潮(うず)」や他の作品も派生して作られるようになり、このドラマもその一つです。

ちなみに「激斗」と書いて「げきとう」と読みます。「えどのげきとう」です。

 

【江戸の激斗】

放映期間:1979(昭和54)年5月31日~12月27日 

放映局:フジテレビ系

時間帯:木曜21:00~21:54

回数:全26回 

出演:小林桂樹夏木陽介柴俊夫石橋正次地井武男名高達郎三浦浩一露口茂 ほか

 

大ヒット作の「江戸の旋風」の休止期間の合間に作られた作品で、小林桂樹露口茂といったところはもはや「江戸」シリーズの常連となる中、夏木陽介をはじめ超豪華キャストで構成された作品で、当時はメジャーではなかったが後に大成していく、地井武男名高達郎三浦浩一などという布陣も、後から見ると超豪華感がありました。

簡単なフォーマットとしては、凶悪化する盗賊団に対抗すべく、秘密組織の設立を命じられた役人たちが、浪人どもを寄せ集めて「遊撃隊」なる隊をつくり、彼らを1回あたり5両の金で雇うが、いずれも曲者揃いで決してチームワークが良いと言えない中で、凶悪な盗賊団と遊撃隊の死闘を描く、といったところです。

他の「江戸」シリーズが人情中心で割に安泰感のある中で、この作品は毎回のように生死のピンチを迎える緊迫感があり、実際に複数の殉死者・離脱者か出ており、そういう意味での異色作だったともいえます。

 

それではレギュラーキャストの紹介を。

※役名の後ろに、話数のついていない場合は基本全話出演です。途中、一部キャストの入れ替りあり。

 

◆花咲長兵衛(小林桂樹)

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「はなさき ちょうべい」。南町奉行所の例繰方与力で昼行燈を決め込んでいる男。

南町の昼行燈、といえば某シリーズの誰かのようだが(笑)、例繰方とは「判例集」を記録する係のような役どころ。

毛間内と共に、奉行より秘密組織の立ち上げを命じられ「遊撃隊」の創設にこぎつけ、その「元締め」に収まるが、いずれ曲者揃いの浪人たちに振り回されながら、隊の運営に手を焼き、それでも任務遂行していく、中間管理職の悲哀も感じさせる。

しかし誰も応じない時は自ら敵陣に突っ込んでいく気概のある男でもある。

 

演じる小林氏は「江戸の旋風」で”おやじさん”にあたる同心・林田孫兵衛を演じ、旋風では欠かせないおやじさんになる一方で、旋風の休止時には「江戸の渦潮」や本作などで主演しており、いわば「裏主役」的な「江戸」シリーズの顔として君臨した。「牟田刑事官の事件ファイル」など2時間ドラマでも活躍した。

 

◆町藤太(夏木陽介) ※1~7話。以後不定期出演。

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「まち とうた」。遊撃隊の隊士で最年長と思われる浪人。

九州弁を遣い、穏やかで飄々とした雰囲気の男だが、武芸に秀でており、槍を遣いながら派手なアクションもこなす。

遊撃隊で最初に離脱した男(正確には、1話で殉死者がいるが…)でもあり、7話で女性と共に激流に流され生死不明の形で降板。四十九日が近づいた頃にひょっこり現れ、仲間たちには死んだと思われていた為、かなり驚かれた。ただし、女と生きる事を決意し、正式に除隊し、以後数回助っ人の形で参加している。

 

演じる夏木氏は当時「Gメン'75」の小田切警視役でも人気を博し主演級でもあったが、その彼をこういう位置づけで起用できる番組キャスティングに、層の厚さが感じられた。2018年没。

 

◆滝新八郎(柴俊夫)

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「たき しんぱちろう」。遊撃隊の隊士。

明るくカラッと性格で裏表のない男。体育会系の豪胆な性格で、隊の運営に不満を見せても、一旦納得すれば意気に感じて快く遂行する。

ひたすら前進していく男でもあるため、傷を負う事もある。

 

演じる柴氏は、当時はまだヒーローもの主演経験者+α的な位置づけながら、時々主演作があるやはり主演経験者。本作終了頃に女優の真野響子氏と結婚した。

 

◆久坂一(石橋正次)

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「くさか はじめ」。遊撃隊の隊士。

曲者揃いの遊撃隊の中で、特に曲者の一人で、その象徴的な存在であるといえる。

ひねくれ者で斜に変えた性格で、隊の運営をめぐっては毛間内と悉く対立し、隊内に波風を立てるが、情に厚い一本気な男であり、血の気も多いが味方につけると安心な存在。技よりも気合で勝負するタイプで、粗削りで型破りたが痛快なアクションを見せる。また唯一、髷を結っていない。

 

演じる石橋氏は青春スターからの脱皮を図る時期で、当時は「夜明けの刑事」「赤い絆」など大映作品にレギュラー出演していたが、これ以降はゲスト出演が増えていく事となる。

 

◆江藤燐兵(地井武男)

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遊撃隊の隊士でベテラン格。

口数の少ない、それでいて折り目正しい態度を取る男であり、荒くれ者の多い遊撃隊にあって独特の雰囲気を持った存在である。

いわゆる「彼女」の居る身で、妻帯者禁制の遊撃隊には内緒で活動してきたが、隊内に知れ渡った際には、特例的に許可される事となり、彼の存在の貴重さが窺える。

 

演じる地井氏は当時まだ悪役のイメージが強かった存在で、「太陽にほえろ!」のトシさんでブレイクするのはこの3年後であり、そこでは本作でも共演した露口氏と再度共演する事となる。2012年没。

 

◆篠原道之介(名高達郎)

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「しのはら みちのすけ」。遊撃隊の隊士。最も若いと思われる。

正統派の二枚目で、明るく爽やかな男で、とかく言葉遣いの悪い遊撃隊の中にあって唯一「敬語を話せる男」でもある。

理屈っぽい面があり青臭いが、基本的にまじめな男で、彼女がいるが隊には好意的に捉えられている。

最終話で彼女との結婚を決意するも、隊の任務で対峙した凄腕の剣客に真正面から縦に切りつけられ、血しぶきをあげながら散っていった。

 

演じる名高氏は当時「「江戸の旋風」からの継続出演で、また初主演作「おやこ刑事」との掛け持ち状態もあり、欠場が多かったが、翌年には「爆走!ドーベルマン刑事」に出演、翌々年には「ザ・ハングマン」に途中参加で出演し、人気を博していく。

 

 

◆片倉小助(三浦浩一) ※1~22話

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「かたくら こすけ」。遊撃隊の隊士。ぶっきらぼうのひねくれ者で、遊撃隊の荒くれ部分を久坂と担っている感がある。

久坂と違い明るくカラッとしたところもなく、ニヒルで虚無的、どこか己の陰を引きずっているような男。篠原と対照的なキャラクターだが、彼なりの不器用な優しさを見せる一面もある。戦闘では手裏剣技を得意とし、バク中もできる身軽な男である。

22話で、不意に情を通い合わせた女性と人生をやり直す決意をするも、その元亭主の仕組んだ罠にはまり、鉄砲隊に取り囲まれて銃弾を浴びた上に、多勢に無勢の中、敵陣に斬られまくって命を落とす。最期の力を振り絞って、その元亭主を斬りつけた途端に相討ちの形で絶命。

演じる三浦氏は柴田恭兵氏などと同じ「東京キッドブラザーズ」出身で、この後は「大空港」でも途中参加で出演、「Gメン'82」でも刑事役で出演。NHK銀河テレビ小説では数作主演しており、その後「鬼平犯科帳」で密偵や2時間ドラマでも活躍。

 

◆堺金吾(左とん平) 7話~

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「さかい きんご」。4話でも一度出ているが、激流に消えた藤太の隣住まいで、そのまま後任的な扱いで遊撃隊に入った。

堺商人という異色の経歴を持つ男で金にがめつい。争いを好まない温厚な男だが、槍を遣った独特の戦術を持っている。

遊撃隊員はとかくギスギスしたイメージが強かった中で、コメディリリーフ的な役どころも担った。

 

演じる左氏は「非情のライセンス」などのバイプレーヤーとして存在感を発揮、当時は「西遊記Ⅱ」で多忙により出演できなかった西田敏行氏に代わって猪八戒役でレギュラー出演していた。

 

◆丸目二郎(古澤一朗) 23話~

「まるめ じろう」。片倉小助の後任で終盤の数話出たのみの遊撃隊隊士。

◆久六(小野ヤスシ)

「きゅうろく」。遊撃隊の密偵の一人で、松吉の手下。せっかちでよく喋る明るい男。

◆松吉(守田比呂也)

「まつきち」。とっつぁんと呼ばれる遊撃隊の密偵。寡黙で実直、仕事が早く確実な真面目男。

◆おゆき(野平ゆき)

遊撃隊の世話係の女性で、部活でいうマネージャーのような存在。道之介の許嫁。

道之介との結婚が実現しようとする矢先、彼が敵に斬られ死別してしまう。

 

◆毛間内以蔵(露口茂)

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南町奉行所の吟味型与力にして、遊撃隊隊長。

遊撃隊の運営は、元締めの花咲も関わるが、この毛間内の方針によるところが大きく、それゆえ当初は彼に楯突く浪人たちと丁々発止やりあっていた。特に荒くれ者の久坂や片倉と衝突する事が多く、本作はこのぶつかり合いがどのようになっていくかが、大きな見どころのひとつにもなっていた。

常に沈着冷静で自らの信念に忠実すぎるが故に、短気な隊士との衝突が多く、彼らを律していく事に非常に心砕いたシーンが多く見受けられた。金で隊士を雇った隊長であるが、自らも先陣を切って悪をバッタバッタと斬りつけてゆく。

妻を亡くしており、その墓参に訪れるシーンがあるが、妻を亡くした設定は「太陽にほえろ!」の山さんと同じ。

 

演じる露口氏は、当時言わずと知れた「太陽にほえろ!」の山さんで人気を博していた押しも押されもしない大俳優だったが、この「江戸」シリーズも常連であり、「江戸の旋風」では山さんのそのまま時代劇版ともいえる雰囲気の同心・島津半蔵を演じ、「江戸の渦潮」でも辰蔵という岡っ引きを演じていた。

 

という事で、なかなか見る事の出来ない本作ですが、ハラハラする事の多い異色作を豪華キャストで送る、という感じでした。

見られた方がいたら、感想ください。